芸術とは、自己表現の手段であるということが多くの人に信じられている。確かに、何かを創りだす時に、そこに自己が介入しないということはほとんど不可能なのかもしれない。ほとんどの表現者はそこに自分の気持ちを込め、創造物を自分の思ったように作り上げようとする。そしてその独自性こそが芸術の評価へと繋がってくる。芸術の受け手が求めるのは、強烈な個性を持った作品である。しかし、芸術とは強烈な個性にしか拓かれないものなのか?そうであるならば、芸術とは特権階級的なものに成り下がったと言われても否定はできまい。
だが、KINDNESSの『World, You Need a Change of Mind』に映るAdam Bainbridgeの顔には、何かを積極的に訴えかけるようなものを感じない。真っ黒な長髪は目にかかり、頭は半分切れて映ってさえいない。動物のネックレスのほうが目立っている始末である。彼は全く自己表現から遠ざかるように傍観者のような目でこちらを見ている。
冒頭の"Seod"では、シンプルなドラムマシンのスネアとキック、そして物憂げなシンセが重ねられている。Adamの声はリバーブを過剰にかけたブライアン・フェリー、曲の終わりの悲しげなブラスはRoxy Musicの『Avalon』の幕切れのようだ。
続く"Swingin party"はthe Replacementsの、"Any one can fall in love"はAnita Dobsonのカヴァーである。どちらもオリジナルと聴き比べても、遜色ない素晴らしいものだ。後半にはEscortの"All Through the Night"をフックにした"Thats all right"もある。
Gee wiz"のアンビエントをくぐり抜けて現れる至高の1分52秒のディスコチューン"Gee Up"は間違いなく今作のハイライトの一つである。余韻のあるピアノやシンセで構成されたHouse"、ベースラインが印象的な"Cyan"など彼のオリジナル曲も良いのだが、カヴァー曲の存在感、全編に渡って充満するリヴァーブは、Adamの表情をやはり完全に隠しているように思える。
自己を消し去ってしまっている音楽、これがKINDNESSの目指しているところなのかもしれない。誰の表情も見えない中で、人々の差異はなくなっていく。そこでは誰もが主役なのだ。独自の個性がないと叩かれるのは仕方がない。ただ音楽、ひいては芸術とは、無数の名のない人たちによって支えられてきたものではなかったか。決して個人の表現欲を満たすだけの道具ではないのだ。かつてブニュエルは映画を作る理由を聞かれた時にこう答えた。「この世界が考えられる世界の最善のものではないということを示すため。」
"World, You Need a Change of Mind" あんたは考えを改める必要がある。とAdamが世界に対して言う時、彼の心の中には芸術、音楽に対する怒りと屈託のない愛情があるのかもしれない。
2012年7月3日火曜日
2012年7月1日日曜日
ICEAGE『NEW BRIGADE』 今更ですが。
"MARCHING"という単語と共にディレイのかかったギターカッティングで始まる冒頭の"White Rune"。なんとなくタイラー・ザ・クリエイターの"Yonkers"の奇怪なサンプリングに似たものを感じる。タイラーは歌の中で憎悪を剥き出しにし、PVの中でゴキブリを食って首を吊って死ぬ。
こんなにもAppetite For Destruction(破壊欲)に突き動かされたロックが最近あっただろうか。欧米で流行るチルウェイヴやローファイ勢とは対蹠的なバンドである。デンマーク出身というところも関係しているのだろうが、歴史の流れとは全く相容れない異形さに満ちている。
レコーディングは1トラックを使っての1発録り。それが荒々しい破壊衝動を納めることに成功している。JOY DIVISIONと比較されることが多いようだが、SEX PISTOLSの『勝手にしやがれ』の生き急ぐスティーヴ・ジョーンズのギターサウンドとギャングオブフォーやワイアーといったポストパンク勢、そしてノーウェイヴの不安定なテンションを通過した印象を受ける。
最後を飾る"YOURE BLESSED"で見せる手数の多いドラムと無機質なギター、そしてその上を飄々と渡り歩くする頼もしいベース、そして"If you could keep me together"と訛りの強い英語で歌うボーカルの怒りを剥き出した雄叫びが、モノラルサウンドの圧力で放出され合わさった瞬間の爆発力は全く近年のロックになかったものだ。明らかにこれは生易しい生の充足に向かっていず、転がっても血を流してでも、死んででも、何かを壊す、そして掴みとるような、まさにTOO YOUNG TO DIEの思想が感じられるのである。
歌詞は宗教や魔術のようなものがモチーフとなっている。破壊衝動の先にあるのは、強い仲間内の結束を求める気持ちが込められている。彼らの破壊は、兄弟間の血の契りのような強い結びつきの欲へと繋がっている。"New Brigade will never fade. ~its within me and you."新しい旅団は決して消えはしない。それは僕と君の中にある。と歌われるように。「愛と革命に生きる」といった太宰治ではないけれども、何かをぶち壊してやりたいという感情がここまで音楽に率直に反映されたロックに僕はとても共感する。
こんなにもAppetite For Destruction(破壊欲)に突き動かされたロックが最近あっただろうか。欧米で流行るチルウェイヴやローファイ勢とは対蹠的なバンドである。デンマーク出身というところも関係しているのだろうが、歴史の流れとは全く相容れない異形さに満ちている。
レコーディングは1トラックを使っての1発録り。それが荒々しい破壊衝動を納めることに成功している。JOY DIVISIONと比較されることが多いようだが、SEX PISTOLSの『勝手にしやがれ』の生き急ぐスティーヴ・ジョーンズのギターサウンドとギャングオブフォーやワイアーといったポストパンク勢、そしてノーウェイヴの不安定なテンションを通過した印象を受ける。
最後を飾る"YOURE BLESSED"で見せる手数の多いドラムと無機質なギター、そしてその上を飄々と渡り歩くする頼もしいベース、そして"If you could keep me together"と訛りの強い英語で歌うボーカルの怒りを剥き出した雄叫びが、モノラルサウンドの圧力で放出され合わさった瞬間の爆発力は全く近年のロックになかったものだ。明らかにこれは生易しい生の充足に向かっていず、転がっても血を流してでも、死んででも、何かを壊す、そして掴みとるような、まさにTOO YOUNG TO DIEの思想が感じられるのである。
歌詞は宗教や魔術のようなものがモチーフとなっている。破壊衝動の先にあるのは、強い仲間内の結束を求める気持ちが込められている。彼らの破壊は、兄弟間の血の契りのような強い結びつきの欲へと繋がっている。"New Brigade will never fade. ~its within me and you."新しい旅団は決して消えはしない。それは僕と君の中にある。と歌われるように。「愛と革命に生きる」といった太宰治ではないけれども、何かをぶち壊してやりたいという感情がここまで音楽に率直に反映されたロックに僕はとても共感する。
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